高校時代新体操部に所属し、毎日放課後の部活動に励んでいました。新体操部はリズム感が大切ということで活動中は何かしらの音楽が常時流れている中でアップ（準備運動）を行いました。ユーロビートのようなアップテンポの曲に合わせてステップのレッスンをしたり、緩やかな曲でバーレッスンをしました。部活を始める際に部員が揃うまでは各自体育館で柔軟体操をしながら始まりを待つのですが、その時に流れていたのがＡＢＢＡの『Ｄａｎｃｉｎｇ　Ｑｕｅｅｎ』でした。私は洋楽に興味がなかったので原曲はだれが歌っているか知らなかったのですが、当時好きだったＳＭＡＰがこの曲を日本語の替え歌にして歌っていた時期があったので音程は知っていました。

現代のようにインターネットなど普及していなかった時代でしたので、タイトルや誰が歌っているのかを調べる術がなく、レンタルＣＤショップで借りて聞くというのが一般的でした。
Ｄａｎｃｉｎｇ　Ｑｕｅｅｎはとても好きな曲でタイトルだけは分かっていたので、自宅で父に誰が歌っているのか尋ねると『ＡＢＢＡというグループで、ＡＢＢＡの最初のＢが左右逆になっているのが特徴だからレンタル屋さんで探してみてごらん』と教えてもらいました。実際にレンタルショップに行って探し当てたときは何だかとてもうれしくてカセットテープにダビングし、当時流行していたウォークマンで学校の行き帰りに毎日聞いていました。

20年の月日が流れ父はこのことを忘れていたようですが、私は父に教えてもらったあの日からずっとこの曲が大好きで、職場で半期に一度の大掃除をスタッフ全員でする時も、たまたまそこにあったＡＢＢＡのＣＤをかけてＤａｎｃｉｎｇ　Ｑｕｅｅｎが流れてくるとあの日のことを思い出しながら作業をしていました。
結婚が決まった時、披露宴で父と入場する時はこの曲で入場したいとずっと思っていました。入場の際にはＭＣの方にお願いし、このエピソードのナレーションを入れてもらえるようお願いしました。父は少し照れながら、でもドアが開いた時はうっすら涙を浮かべて穏やかに笑って私の手を引いて行ってくれました。

30代半ばで少し遅めの結婚でしたのであまり華やかに豪華にするつもりはありませんでしたがこの父との入場だけは大切にしたかったので、ここだけはしっかりとＭＣさんに盛り上げていただけて会場も暖かな雰囲気になるように作り上げていただいて、一生に一度の大切な日に父と私の思い出を振り返ることができて本当に幸せでした。