私の夫は、中学生の時から両親が別居しており、高校生に上がるときに離婚しています。それからは母がひとりで育ててくれておりました。それでも不自由しないようにと、高校卒業後の専門学校への進学も、海外への語学留学もさせてくれたのです。
そんな母に感謝を伝えることもなかなか出来ないまま結婚式を迎えることになってしまったので、彼は母へ手紙を書くことにしたのです。結婚式終盤にその手紙を読むことにしたのですが、その時のBGMとして、夫はどうしても大橋卓弥の「ありがとう」を使いたいと言い、私に聴かせてくれました。その曲はテレビなどで聴いたことはあったのですが、歌詞を知らなかったので、初めてきちんと聴いた時、その歌詞を聴いているだけで彼の母に対する感謝の気持ちが伝わってきて涙が流れました。

しっとりとした曲調で、大橋卓弥さんの優しくあたたかな歌声が静かに心に染みる曲です。
歌詞の中の言葉ひとつひとつが、まさに深い愛情に包まれていて感動的でした。
それまでは楽しくにぎやかな雰囲気で過ごしていた会場が静まり、彼の母への手紙にみんな聞き入っていました。
彼は曲の歌詞を引用して手紙を書いていました。
「頼りなかった僕も 少し大人になり 今度は僕が支えてゆきます」
あなたの願うような僕になれていますか？」

夫は専門学校を卒業して海外の会社に就職しました。そこで初めて自分の力で生活することの大変さを知ったのです。それまでは掃除も洗濯も、料理を作ることさえもしたことがなかった彼は、仕事をしながら自分たちの身の周りの世話を完璧にしてくれていた母への感謝に気づきました。そして、少しずつでも恩返しをしていきたいと言っていました。
その手紙と大橋卓弥さんのあたたかな歌声、そして歌詞に感動し、母が涙して大きく頷いてくれていたのを見て、私もとても感動しました。
会場も大きな感動に包まれ、この場で感謝を伝えることができて本当に良かったと思いました。

結婚式というのは、本人たちのためだけではなく、今までお世話になった人達への感謝を伝える場でもあると思います。普段なかなか言えない言葉も、思っていることをストレートに伝えてくれる共感できる歌詞のBGMを選ぶことによって、少なからず相手への感謝を伝える手助けになってくれるはずです。
大橋卓弥さんの「ありがとう」は、まさにそんな感謝の気持ちを伝えるのにピッタリです。
母はこの曲を結婚式で初めて聴いたそうですが、それ以来大好きになり、よく聴いてはあの日のことを思い出すんだと私にそっと教えてくれました。